天国の設計3
叶鋼教における天国とは信者および信者以外が自由に設計できるところに特徴があります。
預言者によって既にある天の御国を紹介されるのではなく、今は存在しない天国をこれから作ろうというわけです。
今まで2回にわたり、天国について設計仕様を考案してきました。
今回も何点かの仕様を追加したいと思います
地獄と罰について
天国に対比されるのは地獄です。
叶鋼教は天国を作る一方で地獄は作らないのか?という疑問を持つ方もおられるかもしれません。
宗教においての飴と鞭は天国と地獄です。
良いことをすれば褒美に天国へ行けて、悪いことをすれば報いとして地獄に落ちる。
このように脅しすかされた信者は善行に励み、悪行を控えるようになり、神に忠実に生きようと努め、信者の生活を律する効果を発揮します。
また、悪人が必ず罰を受け、善人が報われる因果応報を信じることで、信者は公平感を得られます。
逆に言えば、悪人が罰を受けない場合は、信者が不公平感を持ってしまうことになります。
信者の満足を得られるようにと、私も罰のシステムは考えました。
例えば、「生前に他人に対して与えた苦痛が、冥界においては全て自分で再現される」という罰です。
ですが、これは基準が曖昧なので実装は不可能と判断しました。
例えば、戦争においてミサイルが落ちて大勢の人が死んだとします。
この場合は罰を受けるべきなのは誰でしょうか?
ミサイルを落とした兵士? 兵士の乗る飛行機を整備した整備兵? ミサイル製造工場の労働者? ミサイルの開発者? ミサイル発射命令を出した指揮官? そもそも戦争開始の決断をした政治家たち? 戦争の原因を作った両国の国民たち?
明確に加害者と被害者のいる犯罪でもない限り、「苦痛」を誰かのせいに特定するのは困難です。
遥か未来に冥界を実装する超自然的存在は人の心理を理解しないゆえに、曖昧な要件定義を適当に解釈して実装するなんてことはありません。
明確に対象を定義できない罰を実装することはできません。
ですが私は考えました。
冥界においては生前の言動の全てが万人の前に明らかにされてしまいます。
自分の全てを他人に知られてしまう。これ以上の罰が他にありますでしょうか?
このシステムがあれば、信者は他人に見られても困らないように自分の生活を律することになるでしょう。
冥界とは褒美としての天国と、罰としての地獄の両方の機能を兼ね備えた場所なのです。
どこまで人生を見せるか
先ほども言及したように冥界においては自分の生前の全てが明らかになります。
では、その全てとはどこまでの範囲を意味するのでしょうか?
外から見て分かる言動の全てでしょうか?
それとも内心の動き含めてでしょうか?
この2つは実装の難易度が大きく異なります。
前者なら、過去の時空を光学的かつ音響的に観察するだけで済みます。
ですが後者ならば、非接触で脳内活動をスキャンする高度な観察も必要になります。
ですが超自然的存在ならば、そのような高度なこともしてのけると信じましょう。
問題は、それをする必要があるかないかです。
内心の動きと言っても、表層思考から深層心理、無意識の活動に至るまで多岐に渡ります。
それらのどこまでを観察すれば、その人の生前を見たことになるでしょうか?
表層思考は心にもないことを考えることもできるので、表層思考を観察してその人が分かった気になるのは早計というものです。
しかし深層心理や無意識の活動は、観察しても人に理解できるものではありません。
現時点では表層思考までを見ることができるようにしようと思っています。
ですが、今後の信者たちによっては、外的活動に限定する案やより深い心理までを観察可能にする案が出てくることもあるでしょう。